スタートアップこそ営業代行を使うべき理由|リソース不足を解消し垂直立ち上げする方法

「プロダクトには自信がある。しかし、それを売るための『人』と『時間』が圧倒的に足りない」

これは、シード〜アーリーステージのスタートアップ企業が必ず直面する「死の谷」の悩みです。 資金調達を行い、エンジニアを採用してプロダクトを作り込んだものの、営業部隊を作る余力がない。経営者自身がトップセールスで走っているが、開発や採用もおろそかにできない…。

そんなジレンマを打破し、事業を垂直立ち上げ(バーティカル・ローンチ)するための最強のカードが「営業代行」です。 「営業代行なんて、営業力のない会社が使うものでしょ?」 もしそう思っているなら、その認識はアップデートが必要です。今や成功しているSaaS企業やメガベンチャーの多くが、創業期に営業代行を戦略的に活用しています。

本記事では、なぜスタートアップこそ営業代行を使うべきなのか、その理由と、PMF(プロダクト・マーケット・フィット)を加速させるための具体的な活用ステップを解説します。

目次

1. スタートアップが営業代行を活用すべき3つの理由

大手企業が営業代行を使う理由は「効率化」ですが、スタートアップが使う理由は「生存戦略」です。

① 「時間」を買う:採用のタイムラグをゼロにする

スタートアップにとって、最大の敵は競合ではなく「時間(ランウェイ)」です。 正社員の営業マンを採用しようとすると、求人作成、エージェント選定、面接、内定、入社までで平均3ヶ月。そこからオンボーディング(教育)して戦力化するのにさらに3ヶ月。合計半年が飛んでいきます。 半年あれば、市場環境は激変します。 営業代行であれば、契約から最短1〜2週間で、教育されたプロの部隊が稼働を開始します。この「半年のショートカット」こそが、代行会社に支払う費用の対価です。

② 「検証数」を稼ぐ:PMFのスピードアップ

プロダクトが市場に受け入れられるか(PMF)を確認するためには、机上の空論ではなく、実際の顧客からの大量のフィードバックが必要です。 「機能Aは好評だが、価格が高いと言われる」 「ターゲットだと思っていた業界Bより、業界Cの方が反応が良い」 こうしたデータを集めるには、母数(アプローチ数)が必要です。 創業メンバー数名で数十件架電するよりも、代行会社を使って数百件アプローチし、短期間でPDCAを回す方が、結果として早く「売れる勝ちパターン」にたどり着けます。

③ 「経営者」を守る:コア業務への集中

創業期のCEOは、資金調達、組織づくり、プロダクトのビジョン策定など、代替不可能な業務が山積みです。 もちろん、創業者が現場に出て顧客の声を聞くことは重要ですが、一日中テレアポの受話器を握り続けるのはリソースの無駄遣いです。 「アポ取り(インサイドセールス)」などの労働集約的な業務をアウトソースし、経営者は「商談(クロージング)」や「経営」というコア業務に集中する。この役割分担が、組織の疲弊を防ぎます。

2. フェーズ別・営業代行の活用ステップ

スタートアップの成長フェーズに合わせて、営業代行の使い方も変化させるべきです。

フェーズ1:PMF検証期(0→1)

  • 目的: 売上よりも「顧客の声(フィードバック)」を集める。
  • 適した契約形態: 固定報酬型
  • 運用方法: 成果報酬(アポ数課金)にしてはいけません。「アポさえ取ればいい」となり、強引な営業をされて正確なニーズがつかめなくなるからです。 固定報酬で依頼し、活動報告の中に「断り文句の詳細」や「顧客が反応したキーワード」を細かく記載してもらいます。代行会社は「外部のテスター」と捉えましょう。

フェーズ2:トラクション・拡大期(1→10)

  • 目的: 勝ちパターンを展開し、トップライン(売上)を伸ばす。
  • 適した契約形態: 成果報酬型 または 複合型
  • 運用方法: フェーズ1で見つけた「刺さるトーク」と「ターゲットリスト」を代行会社に渡し、アクセルを踏みます。ここで初めて「数」を追います。 複数の代行会社やフリーランスを並行して稼働させ、パフォーマンス(CPA)が良いところに予算を寄せていく「ABテスト」も有効です。

フェーズ3:組織化・内製化期(10→100)

  • 目的: ナレッジの社内移管と、強固な営業組織の構築。
  • 運用方法: 徐々に社内採用を進めます。代行会社には、新規開拓(リード獲得)のみを任せ続け、商談やクロージングは完全に内製化するのが一般的です(The Model型の分業)。 また、代行会社と契約する際に、優秀なプレイヤーがいればヘッドハンティング(引き抜き)が可能か相談できるプランを持っている会社もあります(※事前の契約確認が必須)。

(参考記事:[記事1] 営業代行とは?アウトソーシングするメリット・デメリット)

3. スタートアップが陥りがちな「失敗の罠」

リソース不足を解消しようと焦るあまり、失敗するケースも後を絶ちません。

罠①:「丸投げ」してしまう

「うちはプロダクトを作るから、売るのはプロにお任せ」というスタンスは100%失敗します。 まだ世にない新しいサービスを売るのは、プロの営業マンでも難しいものです。 「どんな課題に対して、どう提案すれば響くのか」というトークの原型は、創業メンバーが泥臭く作らなければなりません。代行会社はあくまで「そのトークを拡散するスピーカー」です。

罠②:プロダクトの未完成さを営業力のせいにする

「全然アポが取れないじゃないか!代行会社のレベルが低い!」 と怒る前に、冷静になりましょう。もしかしたら、プロダクト自体に魅力がないのかもしれません。 優秀な代行会社を使っても売れない場合、それは「営業の問題」ではなく「商品または市場選定の問題」である可能性が高いです。この厳しい現実(ピボットの必要性)に気づけることも、代行を使うメリットの一つです。

罠③:キャッシュフローの悪化

成果報酬型の場合、売上が入金される前に、代行費用を支払わなければならないケースがあります。 SaaSなどのサブスクリプションモデルの場合、顧客からの入金は毎月少額ですが、代行会社への成果報酬(アポ単価や受注単価)は一括で出ていきます。 CPA(顧客獲得単価)とLTV(顧客生涯価値)、そしてキャッシュ・コンバージョン・サイクルを計算し、資金ショートしないよう注意が必要です。

4. スタートアップ支援に強い代行会社の選び方

老舗の代行会社よりも、スタートアップの文化を理解している会社を選びましょう。

  • ITツールへの親和性: Slack、Notion、HubSpot、Salesforceなどを日常的に使っているか。電話とFAXで報告してくるような会社ではスピード感が合いません。
  • アジリティ(俊敏性): 「来週からターゲット業界をガラッと変えたい」といった朝令暮改の指示に対応してくれるか。
  • コンサルティング能力: ただ架電するだけでなく、「御社のLP(ランディングページ)、ここを直さないとアポ率上がりませんよ」と指摘してくれるパートナー気質の会社が良いでしょう。

まとめ:外部リソースは「ブースター」である

ロケットが宇宙に行くために、発射直後に巨大なブースターを使うように、スタートアップが重力(市場の抵抗)を振り切って飛び立つためには、外部の強力な営業エンジンが必要です。

「自分たちだけでやる」というこだわりを捨て、使えるリソースはすべて使い倒す。 その覚悟こそが、事業を垂直立ち上げへと導きます。

しかし、勢いだけで進むと、思わぬトラブルに巻き込まれることもあります。 最後に、転ばぬ先の杖として「よくある失敗事例」を確認しておきましょう。

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